今学期は「貿易実務日本語」と「商務日本語文書」の授業を担当することになりました。日本と貿易する際に使う日本語や日本企業の習慣を学ぶのですが、教科書を見てもものすごくつまらないです。第一内容が古すぎて学生の将来に役に立つとは思えません。理由は二つです。
まず、この教科書に限ったことではありませんが、中国でのビジネス日本語教育はいまだに80年代から90年代の日本の経済的優位があった時代を前提にカリキュラムが組まれているように思います。「日本の会社が中国で工場を建てる」「日本の会社に製品を納品する」と言う設定ばかりです。もちろん中国はこの先もしばらくは世界の工場かもしれませんが、すでに中国の会社が日本の会社に商品を発注することが増えています。
もう一つは貿易で用いる文書は主に英語で、日本語の社外文書の作成を中国人が行うことなど、将来的に考えづらいことです。日本の会社に就職した中国人ならそのような機会もあるかもしれませんが、英語ができれば十分だと思います。また今はAIの翻訳サービスも翻訳代行サービスもあります。
と文句を言っていてもしょうがないので、内容を貿易だけでなく、日本経済や世界経済まで広げて、なるべく学生の役に立つようにパワーポイントを作成していきたいと思います。
今回はまず初めの基礎知識として、貿易とは何かということを考えました。またそれに付随する貿易の実務の流れをジェトロさんのホームページ↓の資料を基に紹介しました。
ジェトロ (日本貿易振興機構)
https://www.jetro.go.jp/
普通の学生には無縁のように思えてしまう貿易を身近に感じてもらえればと思いました。下に今回作成したPPTを貼っておきます。
ここで中国のシルクロードの話や江戸時代の出島、中華街のことなどで話を広げます
ちょっと世界史を織り交ぜると歴史の好きな学生たちが食いついてきます。貿易=儲かるの話題で、世界一大きなダイヤモンドはイギリス王室にあると小ネタを言います。
旅行先の写真などを張り付けて盛り上げます。
最近では中国が一帯一路の政策を打ち出していますので、そのことにも触れると身近に感じてもらえます。日本語を学習している学生には、言葉が通じないもどかしさは十分に理解できますね。
法制度の話は、いろいろ話しだすと「敏感な話題」として注意を受けますので、サラッと話します。
カントリーリスクの話になるとみんな「イラク」は危ない。と言いますが、中国を含め、リスクのない国はないことを話します。
為替の話題では今の人民元が日本円でいくらくらいかスマホで調べてもらいます。
信用調査会社について少しふれます。100点満点で表される帝国バンクの評点を紹介します。中国では個人の信用を数字で表すアリババの胡麻信用が普及していますから、それの会社版だよ、と話します。
日本は周りを海に囲まれているので、輸送手段は船、飛行機だけですが、中国は鉄道も貿易の輸送手段です、と話します。
代金回収の難しさを話します。中国も独特の商習慣がありますから、学生に中国の決済の習慣を話してもらってもいいですね。
国によっては必要な費用が予測できないことを説明します。
この挿絵はネットから持ってきたのですが、左の日本はみな分かるのですが、右のベトナムの国の影は誰もわかりませんでした。クイズにしても盛り上がります。
ここからは簡単に貿易の流れを口頭で説明します。あまり面白くないので簡単に扱います。
日本ではやったタピオカなどの例を出して、流行をいち早くつかめば大儲けできると話します。
契約の話では私自身の本物の契約書を見せて、説明しました。
保税地域の説明では、中国の会社から発注を受けた、中国に事務所が無い日本企業が、中国の工場に発注して制作、納品する場合に保税地域がどのように用いられるか簡単に説明しました。
自分が実家から荷物を送ってもらったときの話を小ネタとして話します。
最近ではアリババのタオバオから商品を購入して日本のアマゾンなどで売っている個人が多いことを話します。この話題から貿易の主体が、「国(シルクロード、大航海時代)」→「商社(近代)」→「会社(現代)」→「個人」へと変化してきたことを話します。みなで議論しながら進めると90分の授業時間ちょうどでした。
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