中途採用や転職が当たり前になり、増えてきた給与交渉が必要なシチュエーション。
それでも多くのサラリーマンは給与交渉に苦手意識があるかもしれません。
なにしろ日本は長く終身雇用・年功序列で給与が決定されてきたため、一生懸命働けばある程度もらえる社会だったのですから。
そんな日本もようやくジョブ型雇用の一般化により、自分の仕事の市場価値が見えやすくなってきましたね。
ここ中国では給与の交渉は当たり前で、条件に満足できないときには従業員は仕事を辞めて旅行に行ったり、転職したり、はたまた起業したり、みんなバイタリティあふれる人生を送っています。
中国で給料交渉のポイント
では、外国人として中国で働く立場では、どのように給与交渉をしていけばよいのでしょうか?
日本語教師の場合を例にして以下にまとめてみましたので、どうぞご覧ください。
私は大学で働く教師ですが、基本はどの業種でも同じだと思います。
1,自分の業界を知る
まず必要なのは、自分の仕事が属する業界の状況を知ることです。
どこの国でも同じですが、景気のいい業界には流行があります。
IT・製造業などいい時と悪い時があります。
自分の業界が景気がいいのか悪いのか、求人の数や内容を見ればある程度分かりますね。
日本語教師の場合は、外国人の労働ビザの規制の状況などもチェックしなければなりません。
2,自分の会社(単位)・学校・学部の状況を知る
自分の会社や学校の状況を知らずして給与交渉はできません。
あなたがいくら優秀で評価が高い日本語教師でも、外国語学院の中の日本学部の立場が弱ければ昇給などの待遇は望むべくもありません。
外国語学部の中で日本語学部の立場を推測する方法としては、外国語学院の党委員書記・副書記・院長・副院長の中に、日本語の先生がいるかを確認することが一番わかりやすいでしょう。
もし1人でもいれば、学校として日本語学部はある程度重視していることになります。
外国語学院の院長は99%英語科の教授ですが、もし日本語科の教授が副院長以上に入れば日本語科は安泰です。
また現在の国際環境で日本語科はどこも1クラスのみの募集が多いのですが、もし2クラス以上開設していれば、日本語科の状況としては悪くないと言えるでしょう。
更に基本的なこととして、学校が公立であるか私立であるかも確認しましょう。(中国では純粋な私立というのはあり得ず、民間設立という意味の「独立学校・民办学校」といいます)
公立学校は給与に制約が多いのに対し、私立は手当などの調整が容易です。
解説 中国の大学の権力構造
中国では大学にしろ会社にしろ、主に2つのピラミッドが重なっています。それは...
3,自分の能力・評価を知る
自分の能力や学校からの評価について、なかなか把握しにくいと思いますが、基本的に必要なのは「学校が求める能力への評価」です。
初めて日本語教師として中国に来る方の評価としては、学歴が最重要ポイントです。公立大学や有名私立大卒などが高い評価です。
契約更新の際の評価としては、教え方が上手・生徒の人気が高いというのも評価されますが、「トラブルを起こさず、謙虚な教師である」というのが一番の評価です。
授業中に中国の制度などを批判したり、教え子と不適切な関係になったりなどのトラブルが一番評価を下げます。
また、授業を少し早めに切り上げたり、授業中に延々とビデオを見せていたりと教室運営が十分でないところを学校側に指摘されたりしたら、給与交渉などは諦めたほうがいいでしょう。
生徒からの評価については学校によって異なりますが、学校のホームページの個人ページから確認することができるはずです。
4,給与交渉のタイミング
日本企業の駐在員でなく、中国企業や学校に雇用されている場合、基本的に外国人の雇用は1年ごとの更新です。
ですから毎年契約書を更新します。
外国人専門家証の更新は、期限の1カ月前が更新手続きの期限ですから、少なくともその前には給与交渉を終え、新たな契約書の作成を終えておかなければなりません。
そうなると給与交渉を始めるべきは遅くても契約終了の2カ月より前ということになります。
日本語教師の場合、ビザは6月か7月の末が期限になっていると思いますから、4月から5月には契約・給与交渉の話になります。
もし会社や学校が契約更新を希望する場合にはそれよりも早く打診があるはずですから、その時に交渉を始めればよいでしょう。
5,給与の額について
実は給与額に、目安みたいなものはありません。
すべては業界・会社、学校、学部の状況・本人の能力と評価次第です。
日本語教師の場合、基本月給6000元から10000元程度ですが、学校によって手当が異なったり、1年のうち12カ月支給、10カ月支給(夏休み給与無し)などなど条件は異なります。
給与体系に制約があり手当の種類が少ない公立大学の場合、見るべきは、「月給の額と年度末の航空券手当・教師宿舎の環境」くらいです。
私立大学の場合は普通基本給が安く、そこから手当てを上乗せしていくことになり、給与体系は複雑で、実際に働いてみないと給与額は分かりません。
契約更新の際、どのくらいの昇給を望むかですが、まず「昇給ゼロはマイナス評価」です。
日本と違いインフレが進む中国の場合、評価が変わらなくても5%ほどの昇給が当たり前だからです。
日本語教師で、自分の評価にある程度自信があり、日本語学部の状況も悪くないのであれば、最低でも12カ月の基本給支給を要求できるでしょう。
これが認められないのであれば、教師の評価もしくは学部の存続が大変厳しいということです。
ですから日本語教師募集の条件に10カ月のみ支給と書いてあるのは無視してかまいません。評価されれば契約更新時に12か月支給に変更されるからです。
目安として毎週16コマ以上教えているのであれば、標準以上の評価の公立学校の日本語教師は最低でも8000元以上の基本給はもらえるはずです。
もし希望額を聞かれた場合は、その程度は要求してもいいでしょう。
私立学校でも6500元+各種手当以上は要求しましょう。(2022年現在)
中国での給料交渉の実情
ここまで日本語教師の給与交渉について書いてきましたが、基本的にこのような交渉が必要になる状況は生じません。
理由は2つ。
① 契約を更新したい人材の場合、中国の学校や会社は契約期間の途中でも勝手に給与や手当を上げてくれるのです。
そして契約終了の数カ月前から食事会を開いて、その場で契約更新を打診されます。
人材をほかの会社や学校にとられないように、契約内容も勝手に大幅に改善されます。
② 打診がない場合は契約更新の意志がなく、(寂しいですが)もうすでに新しい日本人教師の募集が始まっています。ですから、給与交渉が必要な場面はそれほど多くないのです。
中国で働く理由は人それぞれでしょうが、給与額は自分への評価と考えればしっかりと適正金額をもらいたいもの。
自分の置かれた立場を確認したら堂々と主張しましょう。
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